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にいがたのプロが選定した
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越後妻有の暮らしに入り込み、 雪国特有のしなやかな生き方を学ぶ

    越後妻有(えちごつまり)は、新潟県南部に位置する、十日町市・津南町のエリアの名称です。この地域は、豊かな自然環境と独特の文化、そして四季折々の美しい風景で知られています。とくに「越後妻有アートトリエンナーレ」としても知られる「大地の芸術祭」が開催されることでも有名です。

    また、越後妻有は、国内有数の豪雪地帯としても知られ、冬には数メートルもの深い雪に覆われます。その雪を利用した農業や「十日町雪まつり」をはじめとした地域活動も盛んです。そして、雪国ならではの生活文化や食文化が今もなお受け継がれていることも、この地域の大きな魅力のひとつです。

    そんな越後妻有地域の暮らしを実際に体験できる滞在型教育旅行プランが「越後妻有農村生活体験コース」。越後妻有で連綿とつづく「農ある暮らし」を続ける人びとの生活に入り込むことで、生きる力を育みます。

  • 「ありのままの日常」に入り込む旅。 地域のプレイヤー=農家と直接ふれあう探求型旅行

    モデルコースを策定したのは「株式会社HOME HOME新潟」代表の井比晃さん。
    「ありのままの日常に入り込むような旅」をテーマに、様々なコースを提案しています。

    今回ご紹介するモデルコースのコンセプトは「越後妻有地域のプレイヤーと出会う探求型旅行」。越後妻有の暮らしに密接に関わっているのが、米づくりをはじめとした農業です。地域のプレイヤー=実際に農業を営む農家に滞在し、越後妻有の農村生活を実際に体験することで、生徒たちが自然豊かな環境での生活を体験し、地域の人々との交流を通じて多様な生き方や働き方を学ぶことを目的としています。

    「都会に生きる人たちにとっては、自分たちがまったく触れてこなかった世界にふれる機会となるのではないでしょうか」と井比さん。そう話す井比さん自身も、もともとは都会に暮らすひとりでした。2014年に地域おこし協力隊として十日町に移住。2017年にHOME HOME NIIGATAを立ち上げました。以来、移住者としての視点もうまく取り入れながら、十日町の自然と共生する「田舎暮らし」の魅力を伝え、人生の選択肢を広げる旅を提案しています。

  • 田舎暮らしで変わる 子どもたちの姿勢

    実際に、どんな体験ができるのでしょうか。実際に受け入れを行う農家の方に直接お話を伺いました。十日町市で農業を営む水落静子さんです。水落さんが暮らす東下組地区には「慶地の棚田」など、日本の原風景ともいえる美しい景色が広がります。魚沼産コシヒカリをはじめ、山菜などを使って「十日町のおっかあ(お母さん)」たちが腕を振るった手料理を楽しむ会なども開催し、好評を得ています。

  • 受け入れを行う中で印象的なのは「自発的に行動するように変化する子どもたちの姿」だといいます。
    「都会からお越しのお子さんなどは、田植え体験が終わると、お母さん!カエルを捕ってきてもいいですか?なんて言って田んぼの浅い水の中をパシャパシャと駆けていったり。多分、地元ではできていないんだろうな、という体験を自分自身で楽しむようになるんです」と水落さん。

    自宅だけでなく、他の農家にも積極的に紹介して受け入れています。単独での宿泊体験だけでなく地域を巻き込んで受け入れることで、なるべく多くの学びを得てほしいと話します。

    「子どもたちにせっかく十日町に来てもらうわけなので、十日町ならではの美しい景色や、野菜づくりに取り組む農家さん、牛を飼っている農家さんなど、米づくりだけでなく様々な農家さんがいるんだよ、ということを実際に見て学んでもらえたらと思います」。

  • 素朴で気取らない農家民宿で楽しむ 田舎暮らし体験

    続いてお話を伺ったのは、十日町市で農家民宿「萬代」を営む曽根茂さん。夫婦ふたりで米づくりと耕作を営む傍ら、田舎体験のできる農家民宿を経営しています。関東地方を中心に、日本全国からの観光客を受け入れてきました。教育旅行の受け入れ経験も豊富で、四季を通じて十日町らしい田舎体験を提供しています。「田舎でしかできない生活を楽しみ、そこで得た各々の経験を心に納めて帰ってもらえれば嬉しい」と曽根さん。

    「十日町は春夏秋冬がはっきりしていますので、春になると田植えや野菜の種まき、野菜づくりの準備、夏になればサワガニトリなどの川遊び、秋になれば米の収穫、はざかけ、冬は雪遊びや、餅つきを体験していただいたり。四季折々の体験を楽しんでいただけると思います」。

  • 教育旅行では、多くの場合1泊から数日間の滞在となります。「自分が育てた苗の成長を見てもらいたい」との思いから、別館「クラインガルテン」を開設。長期滞在プランの受け入れも始めました。

    また、中学1年次に教育旅行で訪れた生徒が、3年次に再訪するといったケースもあるそうです。
    「田植えなどの農作業の上達ぶりだけでなく、質問の仕方からしてまるで違う。2年を経て比較すると、お子さんたちの『物事を考える力』がとても付いたなと感じますね」と曽根さん。

    教育旅行への参加がきっかけで十日町の田舎暮らし、そして曽根さんご夫婦の人柄にすっかり魅了され、今度は家族と旅行に訪れるリピーターもいるのだとか。自分が苗を植えたお米を家族と一緒に楽しむというのも、忘れられない田舎体験になりそうです。

  • 越後妻有に生きる人たちの特徴をひとことで表すなら?
    井比さんに伺うと、返ってきた答えは「しなやかさ」でした。

    「都会の暮らしというのは、ある程度決まったルールの中で生活するという面があると思います。対して自然との距離が近い暮らし、とくに農業というのは、試行錯誤の連続です。天候など毎年コンディションも異なりますし、冬には深い雪に閉ざされる世界で日々、懸命に生きているわけです。それゆえに培われた『しなやかさ』、『生きる力の強さ』のようなものがあります」と井比さん。

  • 「そもそも、自分たちで食べ物を作ることができるというのは、生き物としてとても強いことだと思うんです。そうした地域の人々と接することで、生きる力が湧き上がってくると思います。大人の私がそう思うのだから、感性の豊かな子どもたちだからこそ感じ取れる部分があると思っています」。

    観光するのではなく、暮らしに入り込み、地域の文化や暮らしに深く触れること。そして、越後妻有に暮らす人びとの「ありのままの日常」を体験することで、都市生活では得られない「生きる力」や「しなやかさ」を育てることにつながるのではないでしょうか。

体験は価値

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